「半導体材料ってそもそも何?」
「日本にはどんな半導体材料メーカーがあるの?」
「半導体材料の市場規模や世界シェアが知りたい」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。はくです。
2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、現役社員の僕が、半導体材料とは何か・市場シェア・主要メーカーの一覧を解説します。
半導体メーカーのランキングが知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むとわかること
- 半導体材料とは何かがわかる
- 半導体材料の主要メーカーがわかる
- 半導体材料の市場規模とシェアがわかる
半導体材料とは
半導体材料とは、半導体を製造する過程で使われる材料のことです。
具体的には、半導体の素となるシリコンウエハー、リソグラフィーに使われるフォトマスク・フォトレジスト、エッチングに使われるガス、チップを保護するパッケージ材料などがあります。
半導体と違って、日本企業のシェアが高いのが特徴。世界シェア1位を獲得している材料も多いです。
具体的な企業の一覧やシェアは、本記事の後半で解説します。
半導体材料の市場規模
半導体の需要とともに、半導体材料の市場も年々拡大しています。
半導体製造装置および材料の国際団体「SEMI」によると、2022年の半導体材料市場は692億ドルとのこと。日本円で約9兆円です。
(ちなみに、半導体材料を含む半導体業界全体の売上高は約6000億ドル)
半導体材料の消費地域を国別で見ると、世界最大のファウンドリTSMCがある台湾が20%超でトップとなっています。
2位以降は、中国、韓国、日本、アメリカ、ヨーロッパと続きます。
自社で半導体工場を持たない「ファブレス企業」から、半導体の製造を請け負う企業のこと。
たとえば、TSMCはAppleやNVIDIAなどから半導体の製造を受託している。
半導体材料の市場シェア
ここからは、半導体材料の主要メーカーをシェアとともにランキング形式で紹介していきます。
シリコンウエハー
シリコンウエハーは、半導体チップの素となる円盤状の材料です。
半導体は、いきなり小さなチップを加工するのではなく、「シリコンウエハー上に回路を形成」→「チップごとに切断」→「パッケージング」・・・という流れで製造されます。
したがって、シリコンウエハーは半導体製造で必ず使われる重要材料。
前工程の半導体材料で、最も高い売上高を占めます。
シリコンウエハーのシェアが高い日本企業
シリコンウエハーの世界シェア1位と2位は、日本の信越化学工業とSUMCOです。
この2社で、市場シェアの50%超を占めています。
多結晶シリコン
シリコンウエハーの原料である多結晶シリコンでは、山口県の名門トクヤマが有力企業の1つ。
半導体用結晶シリコンで世界シェア30%を誇ります。
フォトマスク
フォトマスクは、リソグラフィーと呼ばれるウエハーに回路パターンを焼き付ける工程で使われる材料。
フォトマスクを通してウエハーに光を当てることで、マスク上のパターンがウエハーに縮小して転写されるといった仕組みです。
フォトマスクは、半導体メーカーの内製化率が高い材料で、外販の割合は3割ほど。
シェア1位と2位は、日本の凸版印刷(トッパンフォトマスク)と大日本印刷で、上位2社で市場シェアの50%超を占めています。
マスクブランクス
マスクブランクスは、フォトマスクの原版となる材料で、ガラス基板上に金属膜と感光膜(光に反応して性質が変わる材料)をコーティングしたものです。
光学機器・ガラスメーカーのHOYAが世界シェア70%で1位を獲得しています。
また、EUVという最先端向けのマスクブランクスでは、ガラスメーカーのAGCが強いです。
フォトレジスト
フォトレジストは、光が当たると性質が変化する感光性材料です。
ウエハーにフォトレジストを塗布し、フォトマスクを通して光を当てると、光が当たった部分(または当たらなかった部分)だけエッチングされて(膜が削られて)、回路パターンがウエハーに転写されます。
フォトレジストは、日本メーカー5社で市場シェアのおよそ9割を占めます。
エッチングガス
エッチングは、簡単に言うと、回路パターンにそって膜を削る工程です。
薬液を使うウェットエッチングと、ガスやプラズマを使うドライエッチングの2種類があります。
金属の膜を化学反応で削るため、危険なガスも含まれます。
エッチングガスのシェアが高い日本企業
エッチングガスで高シェアを獲得する主なメーカーは、以下のとおりです。
超純水
超純水とは、塩類や有機物などを取り除いた超高純度の水のことです。
半導体製造では微細なゴミも不良の原因となるため、ウエハーを洗浄する工程などで超純水が使われます。
超純水のシェアが高い日本企業
超純水製造装置でシェアが高い国内メーカーは、オルガノ・栗田工業・野村マイクロサイエンスの3社です。
CMPスラリー・ドレッサー・研磨パッド
CMPとは、ウエハーの表面を研磨して平坦にする工程のことです。
このCMPプロセスで使われるのが、ウエハーを物理的に削る研磨パッド、化学反応で削るCMPスラリー、スラリーが研磨パッドに詰まるのを防ぐCMPドレッサーです。
CMPスラリー・ドレッサー・研磨パッドでシェアが高い日本メーカーは、それぞれ以下のとおり。
CMPスラリー
- AGC
- JSR
- 富士フイルム
- フジミインコーポレーテッド
- レゾナック
CMPドレッサー
研磨パッド
スパッタターゲット
シリコンウエハー上に金属膜を形成する「スパッタリング」で使われる材料です。
成膜する金属が融着された「ターゲット」に、Arイオンをぶつけることで、金属原子をはじき出してウエハー上に成膜します。
スパッタターゲットのシェアが高い日本企業
スパッタターゲットで世界シェア60%を誇るのが、ENEOSホールディングス傘下の非鉄金属メーカーJX金属です。
総額2000億円をかけて工場を新設中で、今後の成長も見込まれます。
リードフレーム
リードフレームは、半導体チップを固定し、外部と電気的に接続するための材料です。
ここまで説明してきた材料と異なり、半導体の後工程で使われます。
リードフレームでシェアが高い日本メーカーは、三井ハイテック・新光電気工業の2社です。
ボンディングワイヤー
ボンディングワイヤーは、半導体チップとリードフレームを電気的につなぐワイヤーです。
材質には、金、銀、銅、アルミニウムなどが使われます。
ボンディングワイヤのシェアが高い日本メーカーは、住友金属鉱山・田中貴金属工業の2社です。
モールド樹脂
モールド樹脂は、半導体チップを外気や衝撃から保護する封止材です。
住友ベークライトが世界シェア40%で1位を誇ります。
基板
半導体パッケージ基板は、チップを固定する土台となる材料です。
世界シェア1位・2位には、それぞれイビデンと新光電気工業がランクインしています。
- イビデン
- 新光電気工業
まとめ:半導体材料は日本メーカーが存在感
以上、半導体材料の主要メーカーとシェアを解説しました。
半導体製造装置とおなじく、半導体材料は日本メーカーが世界で存在感を持つ分野です。
半導体の需要とともに今後も成長が見込まれるので、ますます目が離せない業界の1つ。
これを機に、ぜひ半導体業界に興味を持っていただければ幸いです!