「中国売上比率が高い企業のランキングが知りたい」
「中国依存度が高いと何が良い(悪い)?」
「具体的なリスクやメリットが知りたい」
このような疑問を解決します。
こんにちは。はくです。
2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、中国依存度が高い半導体業界の企業Top20社をランキング形式で紹介します。
中国売上比率が高いことの具体的なメリットや、中国依存度が高いことのリスクも解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むとわかること
- 中国売上比率が高い企業のランキングがわかる
- 中国依存度が高いことのメリット・デメリットがわかる
中国売上比率が高いことのメリット

はじめに、中国売上比率が高いことのメリットとしては、以下が挙げられます。
- 人口が多い
- 消費も多い
- アジア圏(近い)
- 経済成長している・・・etc
まず、中国の人口は2023年末時点で世界2位の14億900万人です(1位はインドで14億2500万人)。
日本の人口が1億2400万人なので、中国の人口は日本の11倍超。
人口が多ければ、それだけ市場規模が大きいので、企業としても売上を伸ばすことができます。
また、国の経済活動の規模を示すGDP(国内総生産)で中国はアメリカに次ぐ世界2位(日本は4位)。
2023年の実質GDP成長率は+5.2%(日本は+1.5%)と経済的にも成長していることがわかります。
さらに、中国では半導体産業に政府が多額の補助金を支援しています。
国策ファウンドリのSMICや、Huawei傘下のHiSilicon、NAND専業メーカーのYMTCなど、中国の半導体メーカーは近年急速に成長しており、日本の製造装置メーカーや材料メーカーも中国売上比率を伸ばしている状況です。
- SMIC・・・国策ファウンドリ・中国トップの売上高
- HiSilicon・・・Huawei子会社のファブレス
- JCET・・・中国最大のOSAT
- Will Semiconductor・・・イメージセンサー
- Sanechips・・・通信用LSI設計ファブレス
- UNISOC・・・紫光集団傘下のファブレス
- YMTC・・・メモリ中国最大手・NAND専業
- CXMT・・・DRAM専門メーカー
半導体の組立やテストなどの後工程を専門とする企業。
「Outsourced Semiconductor Assembly and Test」の略。
中国依存度が高いことのリスク

一方で、売上比率における中国依存度が高いと地政学リスクもあります。
たとえば、中国はアメリカと対立しており、政治・経済・軍事的な面で争っている状況。
その中でも半導体は、スマホや家電などの電子機器だけでなく、戦車やミサイル核兵器などの軍事品にも使われるため、中国とアメリカは(日本もですが)半導体産業の覇権を握ることが安全保障上の最重要課題と考えています。
そこで、自国の半導体産業の強化を目的にアメリカ政府が導入したのが「対中輸出規制」です。
簡単に説明すると、先端半導体や装置、設計ソフトなどの中国への輸出を禁止するもので、アメリカ政府は、有力な製造装置メーカーを抱える日本にも足並みをそろえるよう求めました。
これを受けて日本政府は高性能な半導体製造装置23品目を対象とした輸出規制を施行しており、東京エレクトロンのエッチング装置や、ニコンの露光装置などが対象となっています。
このように、日本企業にとって中国は、市場規模が大きいというメリットもありますが、政治的な干渉によって突然売上を制限されるというリスクもあります。
とくに半導体は「産業のコメ」と言われる重要物資で、その影響を受けやすいもの。
したがって、中国依存度が高い企業は、こうしたリスクを持ちながら事業を展開していることを理解しておくと良いでしょう。

中国売上比率が高い半導体業界の企業ランキング
ここからは、中国売上比率が高い半導体業界の企業ランキングTop20社を発表します。
簡単に、各企業の主力製品や強みも説明するので、合わせてチェックしてみてください。
順位 | 社名 | 中国売上比率 |
---|---|---|
1位 | ブイ・テクノロジー | 88.5% |
2位 | TDK | 54.8% |
3位 | 村田製作所 | 50.0% |
4位 | フェローテックホールディングス | 50.0% |
5位 | 芝浦メカトロニクス | 37.8% |
6位 | 日東電工 | 35.7% |
7位 | ディスコ | 35.0% |
8位 | 東京精密 | 34.0% |
9位 | ソシオネクスト | 33.0% |
10位 | TOWA | 31.3% |
11位 | アドバンテスト | 30.8% |
12位 | KOKUSAI ELECTRIC | 30.2% |
13位 | ローツェ | 30.0% |
14位 | SMC | 27.0% |
15位 | リョーサン | 26.2% |
16位 | サンケン電気 | 23.7% |
17位 | ルネサスエレクトロニクス | 23.6% |
18位 | 東京エレクトロン | 23.0% |
19位 | マクニカ | 21.7% |
20位 | SCREEN | 20.0% |
第1位:ブイ・テクノロジー
ブイ・テクノロジーは、スマホや薄型テレビに使用されるフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置を開発するメーカーです。
2018年頃から、新規事業として半導体製造装置事業の拡大も進めており、ウエハー研磨装置や検査装置などを開発しています。
海外売上比率は驚異の95.2%で、そのうち中国が88.5%と大部分を占めているのが特徴。
アジアを中心に韓国・中国・台湾などに拠点を設けていますが、直近では経済安全保障上の観点から神奈川県の横須賀に研究開発・生産工場を設立するなど、国内での生産体制を整えています。
第2位:TDK
TDKは、磁性材料の「フェライト」を世界で初めて製品化した総合電子部品メーカーです。
フェライトは、簡単に言うと磁石にくっつくセラミックスで、金属と比べて電力ロスが少ないのが特徴。
主力製品であるフェライトコアはスマホや自動車などに搭載されて、電子機器の小型化・高機能化・省エネ化に貢献しています。
また、海外売上・生産比率約9割とグローバルに事業を展開しているのが特徴。
中国売上比率は54.8%と中国市場に強いことがわかります。
第3位:村田製作所
村田製作所は、国内5位の売上高を誇る電子部品メーカーです。
主力はチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)で、スマホ、PC、家電、自動車など電気で駆動するあらゆる機器に搭載されています。
村田製作所は、海外売上比率9割に対して、国内生産比率が6割と高いのが特徴。
この理由は自社の先端技術が海外に流出するのを防ぐためで、日本の技術や研究者を大切にしていることがわかります。
また、中国売上比率は50.0%です。
第4位:フェローテックホールディングス
フェローテックホールディングスは、主に半導体製造の前工程で使われる部品・材料を開発するメーカーです。
具体的には、世界シェア約7割を誇る真空シール、ウエハーの固定や洗浄槽として使われる石英製品、エッチング装置で使われるセラミックス製品などがあります。
フェローテックの海外売上比率は8割超。
国別で見ると中国が4割超と最も高く、ついでアメリカが約3割となっています。
また、製造も中国を中心に8割を海外で行っていましたが、近年は「国内回帰」を掲げて日本で新工場(石川・熊本県など)の建設を進めています。
第5位:芝浦メカトロニクス
芝浦メカトロニクスは、半導体製造装置・FPD製造装置などを開発するメーカーです。
前工程から後工程まで幅広い装置を手掛け、とくに枚葉式ウエハー洗浄装置では高いシェアを誇ります。
また、フォトマスク分野も主力事業の1つで、EUV対応のフォトマスクエッチング装置も開発。
さらに、後工程ではフリップチップボンダの売上が好調です。
芝浦メカトロニクスの海外売上比率は約7割で、そのうち中国向けが約38%とトップを占めます。
第6位:日東電工
日東電工は、テープやシール材などを開発する化学メーカーです。
半導体関連では、ウエハーを削って薄くするバックグラインド工程で使われるバックグラインドテープと、ウエハーをチップに切断するダイシング工程で使われるダイシングテープで高いシェアを獲得しています。
また、半導体分野以外にも、日常生活で使われる粘着テープや包装材料、工業用テープ、電子材料、自動車用部材、医療用関連製品などさまざまな分野で使われる製品を開発。
海外売上比率は約8割(中国売上比率35.7%)と、日本を代表するグローバルニッチトップ企業です。
第7位:ディスコ
ディスコは、半導体の後工程に強い製造装置メーカーです。
ウエハーをチップに切断するダイシングソー・薄く削るグラインダ・綺麗に磨くポリッシャの3つが主力製品で、それぞれで世界シェア1位を獲得しています。
ディスコの海外売上比率は8割以上で、そのうち中国向けが35%。
社内制度として「グローバルチャレンジ制度」が設けられており、社員が立候補して海外拠点に勤務することも可能です。
第8位:東京精密
東京精密は「精密位置決め技術」が強みの半導体製造装置メーカーです。
半導体製造装置事業と精密測定機器事業の2つを展開。
世界トップクラスのシェアを誇るウェーハプローバや、ダイシング装置、グラインダ、ポリッシャ、CMP装置などを開発しています。
東京精密の海外売上比率は7割超で、中国向けが34%と約半数を占めます。
中国のほか、アメリカ、韓国、台湾など、世界各地に拠点がありグローバルに事業を展開する企業です。
第9位:ソシオネクスト
ソシオネクストは、2015年に富士通とパナソニックの半導体事業が統合してできた半導体ファブレス企業です。
1つの基板(チップ)上にCPUやメモリなど各素子を実装した「SoC(システムオンチップ)」と呼ばれる半導体チップを開発しています。
2018年に社長が変わると、注力製品を民生機器から、自動車やスマートデバイス、データセンターに変更して大きく業績を伸ばしました。
ソシオネクストが得意とするのは、5ナノや7ナノメートルといった最先端半導体です。
先端プロセスで造るカスタムSoCの顧客は海外メーカーが中心で、中国・アメリカが主要顧客となっています。
第10位:TOWA
TOWAは、京都に本社を置く後工程の半導体製造装置メーカーです。
「超精密金型技術」をコアとし、半導体のモールディング装置で世界トップシェアを獲得しています。
TOWAの海外売上比率は約9割で、韓国・台湾・中国などアジアを中心に事業を展開しています。
2021年には中国江蘇省に新会社を設立、2023年に新生産棟を建設するなど、中国における半導体製造装置事業の強化に注力しているのもポイントです。
第11位:アドバンテスト
アドバンテストは、国内2位の売上高を誇る半導体製造装置メーカーです。
主力製品は半導体検査装置で、半導体チップやウェーハの電気特性を測る半導体テスタで世界シェア1位を獲得。
直近では、生成AIで話題のGPU向けテスタを製造する企業として、株式市場でも注目が集まっています。
海外売上比率は9割超で、中国比率は30.8%。
アメリカの対中輸出規制についても、社長の吉田芳明氏は「(今のところ)影響する部分は少ない」と説明しており、中国市場に強いことがわかります。
第12位:KOKUSAI ELECTRIC
KOKUSAI ELECTRICは、2022年売上高で国内4位を誇る半導体製造装置メーカーです。
日立国際電気の半導体製造装置事業が前身で、ウエハーに薄膜を形成する「成膜」に特化しているのが特徴。
「縦型」と呼ばれるバッチ式成膜装置に強く、世界シェア1位を獲得しています。
KOKUSAI ELECTRICの海外売上比率は約9割で、中国比率は30.2%です。
ちなみに、2023年10月に東京証券取引所へ上場しており、コロナ禍以降最大のIPOとなっています。
第13位:ローツェ
ローツェは、半導体のウエハー搬送システムを開発するメーカーです。
FOUP(ウエハーが入った容器)を装置にセットするロードポートや、ウエハーを掴んで搬送する搬送ロボット、ウエハーの移載(入れ替え)を行うウエハーソーターなどを開発。
ウエハー搬送装置の分野で世界シェア1位を獲得しています。
ローツェの海外売上比率は約9割で、そのうち中国比率は30%。
本社は広島県にありますが、高い技術力で世界中のメーカーから受注を獲得しています。
第14位:SMC
SMCは、空気圧制御機器のトップメーカーです。
半導体製造装置で使われるソレノイドバルブやエアシリンダ、そして装置の温調に使われるサーモチラーなどを開発しています。
半導体分野だけでなく、自動車や医療機器などあらゆる現場で使われる部品を手掛けるのが強みです。
SMCの海外売上比率は約7割で、そのうち中国比率は27%。
空気圧業界における市場シェアは国内60%・世界30%超とトップシェアを獲得しています。
第15位:リョーサン
リョーサンは、半導体製品を専門に扱うエレクトロニクス商社です。
半導体メーカーから製品を仕入れて、電子部品メーカーなどに販売するのが仕事で、ルネサスエレクトロニクスの車載半導体を主力に取り扱っています。
リョーサンの海外売上比率は約5割で、中国比率は26.2%です。
エレクトロニクス商社のなかでもトップレベルの営業拠点数を誇り、グローバルに事業を展開しています。
第16位:サンケン電気
サンケン電気は、パワー半導体の設計・開発・製造を行う半導体メーカーです。
主力は自動車・白物家電・産業機器・民生機器向けのパワー半導体で、具体的にはモータドライバ、IC、トランジスタ、ダイオード、スイッチング電源などを開発しています。
とくに、自動車向けは売上高の5割を占める主力事業です。
サンケン電気の海外売上比率は7割超で、そのうち中国比率は23.7%。
EVや白物家電は中国メーカーも多いため、今後の売上成長も期待されます。
第17位:ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクスは、三菱・日立・NECの半導体部門が統合した企業です。
2022年の半導体メーカー売上高ランキングでは、キオクシアやソニーを抑えて国内1位。
車載半導体に強く、クルマの動きを制御する車載マイコンで世界トップシェアを誇ります。
ルネサスの海外売上比率は約7割で、そのうち中国比率は23.6%です。
自動車メーカーは日本勢が強いですが、国内だけでなく、海外メーカーの需要もしっかり獲得していることがわかります。
第18位:東京エレクトロン
東京エレクトロンは、国内1位の売上高を誇る半導体製造装置メーカーです。
洗浄、成膜、エッチング装置など、幅広い工程を手掛けているのが強み。
リソグラフィ工程で使われるコータデベロッパでは、東京エレクトロンがシェア9割で独占しています。
東京エレクトロンの海外売上比率は約9割で、そのうち中国比率は23%。
日経新聞の記事によると、2025年3月期には35%にまで増える見込みと発表されており、日本の半導体製造装置メーカーや材料メーカーにとって中国は重要な市場となりそうです。
第19位:マクニカ
マクニカは、国内1位の売上高を誇る半導体商社です。
グループ全体の売上高が1兆円を超え、ここ数年、右肩上がりに成長しています。
海外売上比率は5割超で、中国比率は21.7%。
半導体の中でも海外製品の仕入れ・販売に強く、世界23ヶ国81ヶ所に拠点を持ちグローバルに事業を展開しています。
第20位:SCREEN
SCREENは、京都に本社を置く半導体製造装置メーカーです。
ウエハーの汚れを取り除く洗浄装置に強く世界シェア1位。
半導体製造装置事業は売上高全体の7割を占め、他にデジタル印刷機やディスプレー製造装置、プリント基板関連機器などの事業を手掛けています。
SCREENの海外売上比率は約8割で、中国比率は20%です。
ウエハーをキレイにする「洗浄」は、各工程の前後で必ず行うので、今後もさらなる成長が見込まれます。
まとめ:中国の半導体市場動向に注目!

以上、中国売上比率が高い半導体関連企業Top20社と、中国依存度が高いメリット・デメリットを解説しました。
中国は国として半導体産業の育成に力を入れており、日本の製造装置・材料メーカーにとって中国企業は重要な顧客です。
アメリカの対中輸出規制など、政治的な影響も受けやすいので、今後の動きにも要注目の市場。
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