「人とくるまのテクノロジー展って何?」
「どんな企業が出展してるの?」
「半導体は自動車にどう関っている…?」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。はくです。
2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
今回は、普段とはちょっと趣向を変えた記事です。
7月17〜19日に名古屋で開催された「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」に参加してきたので、その体験レポートをお伝えします。
実際に会場に行き、とある半導体メーカーさんを取材させていただきました。
出展内容や興味深いと思った技術を紹介しているので、車載半導体や自動車の電動化・自動運転技術などに興味がある方は、ぜひチェックしてみてください!
この記事を読むとわかること
- 人とくるまのテクノロジー展とは何かがわかる
- 自動車の電動化や自動運転技術がわかる
- 車と半導体の関係がわかる
人とくるまのテクノロジー展とは
はじめに、「人とくるまのテクノロジー展」とは何かを簡単に紹介します。
人とくるまのテクノロジー展は、文字通り自動車技術に関する国内最大級の展示会です。
自動車業界に関わる企業や技術者が参加し、最新の自動車技術や研究について議論・交流します。
半導体業界だとセミコンジャパンが有名ですが、これの自動車業界版と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。
ちなみに2024年は、5月のパシフィコ横浜と、7月の愛知県国際展示場の2回開催されました。
出展企業は、トヨタや日産といった自動車メーカーから、デンソーやアイシンなどの自動車部品メーカー、材料メーカー、電子部品メーカー、、、など様々。
半導体関連だと、今回取材させていただいた企業さんの他、半導体材料に強いレゾナックや、マスフローの堀場なども出展していました。
【取材レポート】人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA
ではここからは、「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」の体験レポートを紹介していきます!
取材企業は?
今回取材させていただいたのは、アメリカのテキサス州に本社を置く半導体企業テキサス・インスツルメンツ(略称TI)の日本法人です。
TIは世界25ヶ国以上に製造・販売拠点を持つグローバル半導体メーカーで、2023年の売上高は世界11位にランクイン。
特にアナログ半導体に強く、世界シェアは長年1位を誇ります。
すでに世界トップクラスのシェアを獲得するTIですが、現在、車載半導体にも注力しており、今回人とくるまのテクノロジー展に出展したとのこと。
取材させていただいた日本テキサス・インスツルメンツ合同会社は1968年設立で、TIが設計する半導体の製造・販売を担当しています。
光や音、温度、圧力などの「連続的な」電気信号(アナログ信号)を処理・制御するための半導体。
センサで取り込んだ光や熱などのアナログ信号をデジタル信号に変換したりする。
展示内容は?
日本TIの出展内容は以下のとおり。
自動車の電動化(Vehicle Electrification)や先進運転支援システム(ADAS)に関するものがメインで、TIの半導体技術が使われています。
- バッテリ管理システム(BMS)
- レーダーとカメラのセンサフュージョン認識機能
- フロントカメラ認識
- サテライトアーキテクチャ向け レーダーSoC
- レーダー パーキングアシストシステム
- 高精度キックセンサ
- ドライバーモニタリング
- 子どもの置き去り検知
- ゾーンアーキテクチャ
- スマートヒューズ
少し専門用語もあって、馴染みのない方には難しいですよね。
それぞれ簡単に説明していきます。
バッテリ管理システム
まずBMSというのは、バッテリマネジメントシステムの略です。
自動車に搭載されるバッテリの制御を担う、電動化に欠かせない技術。
展示会では、近年高まっている高センシング・多チャンネル化の要求に対応した製品が紹介されていました。
センサフュージョン認識機能
センサフュージョンというのは、複数のセンサの情報を統合して目的に応じた処理を行う技術のことです。
自動車では、カメラとレーダーで検出した情報を分析することで、より高精度に走行性能や安全性を向上できます。
高精度キックセンサ
また、キックセンサとは、いわゆる足で反応するセンサです。
リアバンパーに足をかざすと自動でバックドアを開閉できる機能に使われています。
ゾーンアーキテクチャ、スマートヒューズについては、次の章で詳しく説明します。
興味深かった技術紹介
さいごに、取材していて特に「面白い!」と思った技術をいくつか紹介します。
ドライバーモニタリング
まず1つ目は、車載カメラを使用したドライバーモニタリングシステム(DMS)です。
TIが開発するAM62AというプロセッサとDMSのソフトウェアを連携することで、ドライバーの状態や車内の動きをリアルタイムで監視できます。
具体的には、運転中にドライバーのスマホ操作や居眠りなどを検知するといったイメージ。
会場ではカメラが搭載されたデモ用の運転席が準備されており、僕も実際に座ってみましたが、顔の向きや体の動き、目線などを細かく検知できているのが驚きでした。
ゾーンアーキテクチャ
2つ目は、ゾーンアーキテクチャという技術です。
僕自身も聞き慣れない言葉でしたが、説明を聞くと、今まで個々に割り当てていたECUをゾーンごとに割り当てることで点数削減や配線の最適化を実現する技術とのこと。
これにより重量軽減やメンテナンス性向上のほか、ソフトウェアのアップデートが簡単になるのがメリットのようです。
具体例を挙げると、テスラのようにソフトウェアを更新して車の機能をアップデートする技術に使われます。
テスラの車がソフトウェアを更新して機能を追加できるという話は知っていましたが、その裏にどんな技術が使われているかまでは知らなかったので非常に興味深かったです。
また、個人的な感想ですが、普段仕事だと装置のメンテナンスが大変なので、ケーブルの配線最適化(メンテナンス性向上)は作業者に優しい設計だなと感じました。
スマートヒューズ
3つ目は、スマートヒューズです。
ヒューズというのは過大電流が流れたとき、回路を遮断して機器を保護する部品ですが、それを電子化したのがTIのスマートヒューズ。
物理的に回路を遮断するのではなく、ICを使って電気的に電流を遮断するので、部品の小型化につながります。
また、復旧する際は自動でリセット可能とのことで、ヒューズ交換が不要なのが便利だなと思いました。
展示会では車のワイパーに使われるヒューズとして紹介されていましたが、もちろんワイパー以外にも使えるとのことで、需要は高そうです。
まとめ:車載半導体が面白い!
以上、「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」の体験レポートを紹介しました。
今回取材させていただいた日本テキサス・インスツルメンツは、現在、車載半導体にも力を入れているとのこと。
バッテリ管理システムやレーダー、車載カメラ、ゾーンアーキテクチャといった技術は、車の電動化・自動運転に欠かせない今後も注目の技術です。
日本TIさんのホームページでは、今回紹介した出展内容がより詳しく説明されているので、ぜひ合わせてチェックしてみてください!