「EUV露光装置の関連銘柄が知りたい」
「そもそも、EUV露光装置ってなに?」
「どこまで開発が進んでるの?」
このような疑問を解決します。
こんにちは。はくです。
2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、今注目のEUV露光装置関連銘柄17社を紹介します。
EUV露光装置とは何かという説明もしているので、EUV関連銘柄に投資したい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むとわかること
- EUV露光装置とは何かがわかる
- EUV露光装置の関連銘柄がわかる
EUV露光装置とは
「露光装置」とは、簡単に説明すると、光を使ってウエハー上に回路を焼き付けるための装置です。
「フォトレジスト」と呼ばれる感光材(光に反応する材料)をウエハーに塗布し、回路が描かれた「フォトマスク」越しに光を照射することで、回路パターンが転写されます。
図で表すと、上記のとおり。
露光装置は、レジストを塗布する装置(コータ)と、露光後に不要なレジストを除去する現像装置(デベロッパー)と一緒に使われます。
ここで重要なのが、露光装置に使われる光源の開発です。
半導体の微細化のためにはより短い波長の光を使う必要があり、現在最先端プロセスで用いられているのが極端紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)という波長13.5nmの光源。
(10ナノメートルは1億分の1メートル。髪の毛の太さは約0.1mmなので、10nmはその1万分の1程度。)
そして、このEUVを使った装置がEUV露光装置です。
2023年現在、EUV露光装置を開発しているのはオランダの半導体製造装置メーカーASML社のみ。
露光装置自体は日本のニコンやキヤノンも参入していますが、最先端半導体向けのEUV露光装置はASMLが独占しています。
露光装置については、下記で詳しく解説しているので、興味がある方は読んでみてください。
EUV露光装置の関連銘柄17社
No. | 社名 | 製品 |
---|---|---|
1 | ASML | EUV露光装置 |
2 | 東京エレクトロン | コータ・デベロッパ |
3 | ギガフォトン | EUV光源 |
4 | ウシオ電機 | EUV光源 |
5 | レーザーテック | EUVマスクブランクス検査装置 |
6 | 日本電子 | マルチビーム描画装置 |
7 | 凸版印刷 | フォトマスク |
8 | 大日本印刷 | フォトマスク |
9 | HOYA | マスクブランクス |
10 | AGC | マスクブランクス |
11 | 東京応化工業 | フォトレジスト |
12 | 信越化学工業 | フォトレジスト |
13 | JSR | フォトレジスト |
14 | 住友化学 | フォトレジスト |
15 | 富士フイルム | フォトレジスト |
16 | 東洋合成工業 | フォトレジスト用感光材 |
17 | 大阪有機化学工業 | レジスト用モノマー |
では、ここからは具体的にEUV露光装置の関連銘柄を紹介していきます。
ASML
さきほど言ったとおり、現在EUV露光装置を開発できるのは、オランダのASMLのみです。
(露光装置メーカーはASMLと日本のキヤノン・ニコンの3社のみ)
EUV露光装置の価格は1台400億円以上で、2022年の出荷実績が40台なので、単純計算で1.6兆円の売上になります。
実際には、EUV以外の光源の露光装置も開発しているので、売上高はそれ以上。
半導体製造装置メーカー全体でも世界2位にランクインしている超巨大企業です。
東京エレクトロン
東京エレクトロンは、露光装置の前後で使われるコータ・デベロッパ(塗布現像装置)でシェア9割以上。
EUV向けに関してはシェア100%を獲得しています。
ASMLとベルギーの研究機関imecと連携して開発を行っている、EUV関連銘柄の1つです。
ちなみに、東京エレクトロンは製造装置メーカーとしても世界4位で、洗浄装置、成膜装置、エッチング装置、、、など幅広い工程を手掛けています。
ギガフォトン
ギガフォトンは、露光装置の光源を開発するメーカーです。
主力はエキシマレーザー(希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いた紫外線レーザー)ですが、次世代光源としてEUV光源の開発も進めています。
ただし、2022年のギガフォトンの資料によると、現状EUV露光装置の光源はすべてASMLが内製しており、ギガフォトンにとってはASMLが顧客かつ競合になるので、開発の優先順位は低いとのこと。
したがって、今後の動向に注目です。
ちなみに、ギガフォトンは建設機械で有名な小松製作所の完全子会社。
ウシオ電機
ウシオ電機も同じく光源を開発するメーカーです。
露光装置向けのほか、医療機器や商業施設の証明、プロジェクター向けの光源も開発しています。
半導体製造装置向けでは、主にハロゲンヒーター・露光用のUVランプ・洗浄用のエキシマ光源を開発。
また、EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源の開発にも取り組んでいます。
ちなみに、ギガフォトンは元々ウシオ電機とコマツの合弁子会社でしたが、2011年にウシオ電機がコマツに株式譲渡しています。
レーザーテック
レーザーテックは、露光工程で使われるフォトマスクの検査装置、およびマスクブランクスの検査装置を開発するメーカーです。
マスクブランクスというのは、フォトマスクの原版となる材料で、ガラス基板上に金属膜と感光膜がコーティングされています。
レーザーテックは、EUVマスクブランクス検査装置で世界シェア100%と市場を独占。
高年収・高利益率企業の代表なので、株をやっている方はご存知の方も多いかもしれませんね。
日本電子
日本電子は、電子顕微鏡や医療機器、産業機器を開発するメーカーです。
半導体製造装置では、マスクブランクス上に回路パターンを形成する電子ビーム描画装置を開発。
中でも、多数の電子ビームを個別に制御するマルチビームマスク描画装置は現在日本電子が先行しており、EUV向けで活躍が期待されます。
凸版印刷・大日本印刷
凸版印刷(トッパンフォトマスク)と大日本印刷(DNP)は、ともにフォトマスクを開発するメーカーです。
2社で世界シェアの5割を占めており、日本勢が強い分野でもあります。
現状、インテル・サムスン・TSMCなどの大手半導体メーカーでは、EUV向けのフォトマスクは内製化していますが、ラピダスがEUV向けフォトマスクを外注すると発表。
直近では、トッパンフォトマスクがラピダスと提携するIBMの開発向けに次世代半導体用フォトマスクの供給を開始しています。
AGC・HOYA
AGCとHOYAは、フォトマスクの原版となるマスクブランクスを開発する化学メーカーです(HOYAはフォトマスクも開発)。
EUV向けのマスクブランクスを製造するメーカーは少なく、AGCとHOYAはその中の1つ。
たとえば、AGCは2017年からEUVマスクブランクスの生産を開始しており、ガラス材料から研磨、洗浄、成膜までを1社で手掛けるのが強みです。
また、HOYAも2023年にシンガポールのEUVマスクブランクス工場の生産能力を増強しています。
東京応化工業・信越化学工業・JSR・住友化学・富士フイルム
東京応化工業・信越化学工業・JSR・住友化学・富士フイルムの5社は、フォトレジストを開発するメーカーです。
フォトレジストは日本企業5社で市場シェア90%を占める半導体材料。
EUVフォトレジストについても、各社が研究開発を進めています。
東洋合成工業
東洋合成工業は、フォトレジスト用の感光性材料を開発する化学メーカーです。
感光材で世界シェア1位を誇っており、2019年から2020年にかけては株価が14倍に急上昇して話題になりました。
この株価急騰の理由となったのが、東洋合成が世界シェア5割超を誇るEUV向け感光材です。
大阪有機化学工業
大阪有機化学工業は、「アクリル酸エステル」という有機化学品を開発するメーカーです。
半導体材料では、レジスト原料のモノマーを製造。
全体で見るとEUV用途の割合は少ないですが、需要が拡大しており、今後の伸びが期待されます。
まとめ:EUV関連銘柄から目が離せない!
以上、EUV露光装置の説明と関連銘柄17社を紹介しました。
EUV露光装置は、最先端プロセスに欠かせない技術ですが、まだまだ課題が多いのも事実。
各社が研究開発に力を入れている分野なので、今後も目が離せません!
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