【1分でわかる】静電チャックとは?原理と用途をわかりやすく解説

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【1分でわかる】静電チャックとは?原理と用途をわかりやすく解説

「静電チャックって何のこと…?」

「原理や用途を教えてほしい」

「静電チャックのメーカーと市場シェアが知りたい」

このような疑問にお答えします。

こんにちは。はくです。

2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。

本記事では、半導体製造における超重要技術「静電チャック」をわかりやすく解説します。

この記事を読むとわかること

  • 静電チャックとは何かがわかる
  • 静電チャックの原理と用途がわかる
  • 静電チャックのメーカー一覧がわかる
目次

静電チャックとは

静電チャックとは、その名の通り電気的な力で対象物(ワーク)を吸着させる部品です。

英語で「Electric Static Chuck」と言い、頭文字を取って「ESC」や「Eチャック」と呼ばれたりもします。

静電チャックの用途

静電チャックの役割は、ずばり対象物の保持・固定です。

したがって、工作機械で部品や工具を固定したり、半導体製造装置でウエハーを固定する用途で用いられます。

物理的に固定する方法と違って、対象物に触れずに保持する方法なので、傷やダメージが少ないのがメリット。

また、対象物全体を均一な力で吸着できるため、ウエハーに熱を均等に伝えられるという特徴があります。

静電チャックの原理

静電チャックの材質には、アルミナ(Al2O3)や窒化アルミ(AlN)などの絶縁材料が使われます。

絶縁体の中に電極が内蔵された構造になっており、この電極に電圧を印加することでウエハーを吸着するという仕組みです。

この原理を図で表すと、以下のとおり。

双極型の静電チャックの原理

まず、静電チャックにウエハーを載せた状態で、内部電極にプラスとマイナスの電圧を印加します。

すると、ワーク中のプラスとマイナスの電荷が引き合うように移動(誘電分極)。

その結果、電極とウエハーの間に吸着力が発生して固定されるという仕組みです。

ここで、静電チャックには、発生する吸着力の原理によって「クーロン力型」「ジョンソンラーベック型」などの種類があります。

対象物の物性や用途によって使い分けますが、詳しくは下記記事を参考にしてください。

もっと詳しい吸着原理

クリエイティブテクノロジー

単極と双極の違い

上記で説明した方法は、静電チャック内部に電極が2つ以上あるため「双極型」と呼ばれます。

単極型の静電チャックの原理

一方で、双極型とは別に、内部電極が1つの「単極型」も存在します。

単極型では、電極が1つしかないため、ウエハー内で誘電分極が起こりません。

そこでプラズマを発生させて、ウエハーとチャンバー(アースに接地された)を電気的に接続します。

すると、ウエハーが帯電し、静電チャック電極とウエハー間で吸着力が発生するという原理です。

単極型は、低電圧で高い吸着力が発生させられるのがメリットですが、プラズマを発生させる必要があるといったデメリットもあります。

半導体製造装置における静電チャックの重要性

近年、半導体の微細化によってウエハーの均一な温度コントロールが重要視されています。

したがって、ウエハー全体の温度を誤差1℃以内で均一に保つためには、静電チャックが必要不可欠。

ヒーターが内蔵された静電チャックもあり、全体を20のゾーンに分けて個別に温度制御できるような製品もあります。

また、半導体製造装置では、下はマイナス数十℃から、上は数百℃まで、プロセスの種類によって幅広い温度帯を使用。

したがって、静電チャックに使われる材質も、耐熱性・耐食性・耐プラズマ性などの特徴が求められます。

静電チャックのメーカー一覧

ここからは、半導体製造装置向けの静電チャックを開発する主なメーカーを紹介します。

製造装置や材料と同じく、静電チャックは日本メーカーが強い分野です。

ぜひチェックしておきましょう。

(※僕が調べた限りの情報なので、追記や修正があればご指摘いただけるとありがたいですm(_ _)m)

新光電気工業

新光電気工業は、長野県長野市に本社を置く企業です。

主力は世界シェア2位を誇る半導体パッケージ基板ですが、静電チャックも開発しています。

とくにコンダクターエッチング装置向けで高いシェアを誇っているのが特徴です。

住友大阪セメント

住友大阪セメントは、住友グループに属するセメントメーカーです。

主力はセメント事業ですが、新材料事業として半導体製造装置向けの静電チャックも開発。

高純度のSiC(炭化ケイ素)超微粒子を原料とした静電チャックで、高純度・高熱伝導・高耐電圧・高耐久性などが特徴です。

また、2021年、2023年と立て続けに静電チャックの生産能力増強を発表しており、今後の売上増が期待されます。

TOTO

TOTOは福岡県北九州市に本社を置くメーカーです。

トイレや洗面器などの衛生機器が有名ですが、実はセラミック事業として静電チャックを開発しています。

売上高はTOTO全体の4%と少ないですが、営業利益は全体の約14%を占める稼ぎ頭の1つ。

トイレで培った成形、焼成技術を活かして、静電チャックで高いシェアを獲得しています。

日本ガイシ

日本ガイシは、愛知県名古屋市に本社を置くセラミックスメーカーです。

半導体製造装置向けのセラミックス製品を多く製造しており、静電チャックセラミックヒーターを開発しています。

強度や耐熱性、耐食性に優れているのが特徴です。

日本特殊陶業

日本特殊陶業も、同じく愛知県名古屋市に本社を置くセラミックスメーカーです。

日本ガイシのスパークプラグ部門が分離して設立された会社で、静電チャックはグループ会社のNTKセラテックが開発しています。

用途に応じて様々なタイプのウェハチャックをそろえているのが特徴です。

京セラ

京セラは、京都に本社を置く電子部品メーカーです。

静電チャック以外にも、車載やスマートフォン、医療、エネルギーなど、幅広い分野のセラミック部品を展開。

半導体製造装置向けでは、セラミックヒーター静電チャックが主力です。

クリエイティブテクノロジー

クリエイティブテクノロジーは、神奈川県に本社を置く部品メーカーです。

静電チャックに特化した開発を行っており、半導体や自動車、繊維産業向けに事業を展開しています。

筑波精工

筑波精工は、栃木県に本社を置く静電チャックの専業メーカーです。

現社長が東京大学の樋口研究室で研究した成果をもとに事業を展開。

設備投資をおさえたファブライト方式が特徴です。

巴川製紙所

巴川製紙所は、印刷用トナーや電子材料をメインに事業を展開するメーカーです。

製紙業や電子材料事業で培った技術を活かして、静電チャックも開発しています。

静電チャックの原理と特徴まとめ

静電チャックの原理と特徴まとめ

静電チャックの特徴をまとめます。

  • 電気的な力でウエハーを固定する部品
  • ウエハーの保持の他に、均一な温度コントロールの役割もある
  • 吸着原理によって、単極型双極型に分かれる
  • 吸着力の種類は、クーロン力ジョンソンラーベック力などがあり、用途によって使い分ける
  • 静電チャックの材質には、アルミナや窒化アルミなどの絶縁材が使われる
  • 半導体製造装置で使う静電チャックには耐熱性・耐食性・耐プラズマ性などの特性が求められる
  • 静電チャックは、日本メーカーが強い

以上です。

本サイトでは、他にも半導体業界の知識や情報を解説しているので、ぜひその他の記事も読んでみてください!

参考にした記事・論文

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この記事を書いた人

半導体製造装置メーカーで機械設計をしてます。

●年齢:30歳・社会人6年目
●目標:半導体業界の魅力を伝えること

「半導体業界のリアルな働き方」をテーマに、本業で学んだ内容を発信しています。
ツイッター・インスタグラムも毎日投稿しているので、ぜひフォローお願いします。

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