「半導体業界の動向が知りたい」
「2023年の現状や今後の市場予測は?」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。はくです。
2019年に大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、現役社員の僕が、半導体業界の動向から、2023年の現状と市場予測、さらには2024年以降の展望や今後の将来性をわかりやすく解説します。
半導体業界へ就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読むとわかること
- 半導体業界の動向がわかる
- 2023年の現状と市場予測がわかる
- 半導体業界の将来性がわかる
半導体業界とは
半導体は、簡単に言うとスマホやパソコン、自動車などに使われる電子部品のこと。
データを記憶するメモリ半導体、計算をするロジック半導体、電力の制御をするパワー半導体などがあります。
そして、この半導体を製造する業界が半導体業界です。
半導体業界の会社は、半導体を開発する半導体メーカー、半導体をつくるための装置を開発する半導体製造装置メーカー、半導体の素となる材料を開発する半導体材料メーカー、、などに分かれます。
詳しくは下記記事で紹介しているので、もっと知りたい方は参考にしてください。
半導体業界の特徴
半導体業界の特徴として、「シリコンサイクル」と呼ばれる景気循環があります。
これは業績が良くなる好景気と、業績が落ちる不景気を繰り返すサイクルのことで、半導体業界は約4年周期で好況と不況を繰り返してきました。
もう少し具体的に説明すると、たとえば半導体不足になれば、半導体メーカーの受注が増えます。
そうなると、生産を増やすために半導体メーカーの設備投資が活発になり、製造装置メーカーや材料メーカーの受注も増えます。
結果的に、半導体業界全体の景気が良くなるという構図です。
一方で、生産が追いついてくると供給過剰になって半導体の価格は下がります。
そうなると、半導体メーカーの設備投資が抑えられるため、さっきとは逆で業界全体の売り上げが下落してしまいます。
半導体は技術革新が早く、設備投資のタイミングや在庫管理が難しいため、このシリコンサイクルが業界の特徴の1つです。
半導体業界の動向と市場予測
ここからは、半導体業界の動向を過去・現在・未来の3つの視点で説明します。
好調だった2022年まで
2020年から2021年にかけて、コロナによる巣ごもり需要やテレワーク拡大のおかけで、半導体業界は空前の好景気でした。
具体的には、巣ごもりによってゲームやNetflixといったサービスが普及したこと、テレワークで通信に使うデータセンターの需要が増えたことが要因です。
これらの通信機器には半導体がたくさん使われるので、半導体の需要が急拡大して、一気に売上が上がりました。
2022年前半もその勢いは続き、世界の半導体売上はプラス成長でしたが、後半ぐらいからは巣ごもり需要の一巡や、インフレ、金融引締、中国のゼロコロナ政策、、、などの影響から、市場は減速しています。
2023年は減速傾向
2023年もこの状況は続き、市場はマイナス成長になると予測されています。
不調の原因の1つは、スマホやPC、データセンターの需要減で、これによってメモリ半導体の売上が減少したことです。
実際に、「iPhone14の売れ行きが良くない」というニュースを見た方もいると思います。
半導体メーカーでも、設備投資計画の見直しが相次いでおり、そのため業界全体として業績が下がると予想されているのです。
- インテル:前年同期比9〜13%減予想、設備投資費270億ドルから230億ドルへ
- TSMC:現在過剰な在庫を抱えており、2023年前半に渡って在庫調整が行われる見込み
一方で、自動車や再生可能エネルギー向けの半導体需要は伸びており、これらに使われるアナログ半導体・パワー半導体を提供する企業は成長しています。
日本企業だと、車載用マイコンで世界シェア1位のルネサスエレクトロニクスは、2022年の売上高が前年比プラスで好調です。
2024年には回復する
各企業のサイトや新聞・ニュース記事を調べたところ、半導体の在庫調整は2023年前半に終わり、後半から回復するという見方が多いです。
そのため、2024年以降は半導体のニーズ回復でプラス成長に転じると予想されています。
国内首位の半導体製造装置メーカー東京エレクトロンによると、2024年の動向は以下のとおり。
過去に半導体市場を拡大させたパソコン(PC)やスマートフォン向けなど従来の需要に加え、24年以降は今後本格的に普及するメタバースや自動車の電動化、自動運転レベルの進展など「新しいアプリケーションがどんどん出てくる」ことで市場が急拡大していくと述べた。
東京エレクトロン河合利樹社長のインタビューより
とはいえ、半導体業界は何が起こるかわからない
以上、半導体業界の動向を説明してきましたが、ここまで書いた内容はあくまでも予想。
実際に当たるかどうかはわからないというのが、さいごに言っておきたいことです。
たとえば、2019年のコロナは誰にも予想できませんでしたし、それによる半導体業界の急成長も予想の範囲外。
直近だとロシアによるウクライナ侵攻や急速な円安など、半導体業界の動向に影響を与えるできごとがいくつも起こっています。
ただ1つ確実に言えるのは、半導体業界は長期的には必ず伸びるということ。
パソコンやスマホ、データセンター以外にも、自動運転、EV、医療、ヘルスケア、AI、5G、暗号資産(仮想通貨)、メタバース、スマートシティ、、、など、半導体の需要は今後ますます拡大します。
2023年現在で半導体市場の売上は約6000億ドルですが、2030年には1兆ドルへ成長すると言われており、半導体業界の将来性は明るいです。
■半導体市場規模予測
— はく|半導体業界の企業解説 (@nanamemo_net) September 11, 2023
2022年(今)→ 2030年(予測)
①半導体市場全体:6000億ドル → 1兆ドル
②パワー半導体:240億ドル → 370億ドル
③半導体製造装置:1000億ドル → 2000億ドル
④半導体材料:700億ドル → 1050億ドル
ちなみに、日本の自動車業界の市場規模が64兆円(約4500億ドル)です😲
まとめ:半導体業界の将来は明るい
記事の内容をまとめます。
- 半導体業界には好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」がある
- 2022年前半までは、コロナによる巣ごもり・テレワーク需要で半導体業界はプラス成長
- 2023年は需要が一巡し、マイナス成長になると予想
- メモリ半導体の売上が下落しているが、一方でアナログ半導体・パワー半導体の売上は伸びている
- 2024年には在庫調整が終わり、プラス成長に転じるとの見方が多い
- 長期的には、自動運転、EV、AI、5G、暗号資産、メタバースなどがけん引し、半導体業界は伸びると予想される
以上です。
半導体業界には景気の波がありますが、長期的には伸びるというのがよく言われていること。
今回紹介した内容は、あくまで僕自身が調べた内容をまとめたものです。
実際どうなるかは誰にもわかりませんが、よければ皆さんの意見も僕のTwitter(@nanamemo_net)やInstagram(@haku_kikai.to.handotai)へコメントで教えてください。